第26話「高田万由子さんと囲碁との意外な関係」の巻
石野先生「薫ちゃん、タレントの高田万由子さんって知ってる?」
薫ちゃん「いつになく唐突ですね(笑)もちろん知ってますよ。東京大学を卒業された女優さんで、バイオリニストの葉加瀬太郎さんの奥さんですよね。」
石野先生「そうそう、よく知ってるじゃない。」
薫ちゃん「最近は、クイズ番組なんかによく出演されてるような気がします。」
石野先生「うん、その高田万由子さんなんだけどね、今僕が読んでいる『昭和囲碁風雲録』という本の中で紹介されているんだけれど、意外にも囲碁とちょっとだけ関係があるらしいんだよ。」
薫ちゃん「えっ、そうなんですか?囲碁が趣味とか、学生時代に囲碁をやってたとか・・・」
石野先生「う〜ん、そういうんじゃないんだけどね。以前に、幕末から明治にかけて囲碁の家元たちの生活が困窮してしまったって話をしたよね。」
薫ちゃん「はい、江戸幕府からお給料がもらえなくなっちゃったんですよね。」
石野先生「もちろん本因坊家も例外ではなくてね、当時本因坊を継いでいた本因坊秀栄(ほんいんぼうしゅうえい)も随分と質素な生活を送っていたらしいよ。」
薫ちゃん「でも、お弟子さんも大勢いたでしょうし、プロなんだからお金も稼がないといけませんよね。」
石野先生「そこでだ、秀栄先生や他の棋士たちを金銭面でバックアップしてくれる人が現れた。当時大富豪だった高田慎蔵という人の奥様で、高田民子さんという女性だ。」
薫ちゃん「その民子さんは、囲碁をやっていたんですか?」
石野先生「うん、秀栄先生に囲碁を習っていてね、初段くらいの腕前があったらしいよ。当時は段位が厳しい時代だったから、初段といえば現代の五〜六段くらいの実力はあったはずだよ。と、ここまでの話は僕も知っていたんだけどね、驚いたのはここからだ。」
薫ちゃん「その話が、高田万由子さんとどう繋がって・・・高田民子・・・高田万由子・・・えっ、まさか・・・」
石野先生「そう、そのまさかだ。高田万由子さんは、その民子さんの玄孫(やしゃご)なんだって。僕は、全然知らなかったよ。」
薫ちゃん「玄孫って、孫の孫ってことですよね。高田万由子さんが、そんな囲碁界の大恩人の一族の方だったなんて。ものすごいお嬢様だっていうのは聞いたことがありましたけど・・・」
石野先生「ねぇ、びっくりだよね。今まで高田さんがテレビに出ていてもあまり意識したことはなかったんだけど、急に親近感がわいてきたな。」
薫ちゃん「私もその本読んでみたいです。」
石野先生「僕が読み終わったら、貸してあげるよ。この本の作者の中山典之先生は、プロ棋士でありながら文章を書くことがものすごく得意でね。面白い本をたくさん書いているんだ。」
薫ちゃん「私も、本をたくさん読んで、囲碁の歴史をもっと勉強しようっと。」