第1話「薫ちゃん、囲碁に興味を持つ」の巻
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【登場人物紹介】
薫(かおる)ちゃん(16歳):高校1年生の女の子。ふとしたことから囲碁に興味を持つ。
石野(いしの)先生(21歳):薫ちゃんの家庭教師の大学生。大学では囲碁部に所属している。
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薫ちゃん「先生、ちょっといいですか。」
石野先生「何だい、改まって。」
薫ちゃん「先生って、確か囲碁が趣味でしたよね?」
石野先生「うん、よく知ってるね。囲碁を始めてもう10年近くになるかなぁ。」
薫ちゃん「実は、昨日テレビを見ていたら、囲碁の人の特集をやっていて、10代で何とかというタイトルを取ったんだって紹介されていたんですよ。」
石野先生「ああ、芝野虎丸名人のことだね。」
薫ちゃん「私とほとんど歳が変わらないのに、日本一になるなんてすごいですよね。」
石野先生「正確にいうと日本一になったわけじゃなくて、囲碁のタイトルの1つを獲ったってことなんだけどね。」
薫ちゃん「えっ、日本一じゃないんですか?囲碁のタイトルって、そんなにたくさんあるんですか?」
石野先生「主なタイトルとしては、昔から7大タイトルと呼ばれているものがあってね。その中でも、歴史があってそのうえ賞金も高額な3つのタイトルを、3大タイトルと呼んでいるんだ。もちろん、7大タイトル以外にもたくさんのタイトルがあるよ。」
薫ちゃん「ふんふん。」
石野先生「芝野虎丸先生が獲得したのは、その3大タイトルの一つである『名人』なんだよ。」
薫ちゃん「へ~。じゃあ、他にもタイトルを持っている人が大勢いるんですね。」
石野先生「そうだね。例えば、井山裕太先生のことは、薫ちゃんでも名前くらいは聞いたことがあるんじゃないかな。」
薫ちゃん「う~ん、聞いたことがありません・・・」
石野先生「そうなんだ・・・まあいいや。とにかく芝野先生は、史上最年少で3大タイトルの1つを獲得した、すごい先生ってこと。」
薫ちゃん「さっきから先生、囲碁の人のことを『先生』って呼んでますけど、お知り合いなんですか?」
石野先生「いやいや、囲碁関係者はプロ棋士のことを、尊敬の念を込めて『先生』って呼んでるんだよ。お医者さんや政治家を『先生』って呼ぶようなものかな。」
薫ちゃん「プロ・・・囲碁って、プロの人がいるんですか!?」
石野先生「・・・薫ちゃん、囲碁のこと本当に何も知らないんだね。」
薫ちゃん「当然ですよ。私の周りに囲碁やってる人なんて1人もいないし、ルールだって全然知らないし。」
石野先生「学校に、囲碁部とかはないの?」
薫ちゃん「どうだったかなぁ、あったかもしれないし、なかったかもしれないし・・・」
石野先生「ずいぶんな扱いだね(笑)」
薫ちゃん「だって、囲碁って難しいんでしょ?学校の勉強も忙しいのに、囲碁なんてやってられませんよ。」
石野先生「そこまで言われると、悲しくなっちゃうなぁ。そうだ、薫ちゃん囲碁を始めてみない?」
薫ちゃん「ムリムリムリムリ、私頭悪いし、ルールとか覚えられそうにないし。」
石野先生「いやいや、囲碁って実はルールはメチャクチャ簡単なんだよ。それにね、囲碁が強くなると数学の成績が上がるっていわれてるんだ。」
薫ちゃん「えっ、数学の?」
石野先生「うん。薫ちゃん、数学苦手だったよね。」
薫ちゃん「はい。それ本当なんですか?」
石野先生「僕も、中学生の時に囲碁を始めてから、数学の成績が上がったよ。」
薫ちゃん「先生、囲碁教えてください!」
石野先生「あはは、単純だね、薫ちゃん(笑)」
薫ちゃん「も~、からかわないでくださいっ!」
石野先生「よし、次から勉強が終わった後、少しずつ囲碁を勉強していこうか」
薫ちゃん「はい、お願いします。」