薫ちゃんの徒然囲碁日記

囲碁に少しでも興味を持ってくれた方が、より囲碁を楽しめるような豆知識を紹介していきます。

第51話「本因坊秀策って、すごい人なの?」の巻

石野先生「薫ちゃん、毎日新聞で面白い記事を見つけたよ。尾道市が、本因坊秀策の生涯を紹介する冊子を作ったんだってさ。」

mainichi.jp

薫ちゃん「本因坊秀策さんって、尾道市の出身だったんですね。」

石野先生「正確に言うと、瀬戸内海の因島(いんのしま)の出身なんだよ。昔は因島市だったんだけれど、市町村合併尾道市に吸収されちゃったんだね。」

薫ちゃん「こんな風に尾道市が冊子を作っちゃうなんて、地元の人たちに愛されているんですね。そんなにすごい人だったんですか?」

石野先生「因島には、秀策の記念館があるくらいだからね。」

honinbo.shusaku.in

石野先生「秀策の実績を語ると長くなっちゃうんだけれど、有名なエピソードをいくつか紹介してみようか。」

薫ちゃん「わ~い、お願いします!」

石野先生「秀策は、幼名を虎次郎(とらじろう)といってね、幼いころから囲碁の才能はずば抜けて居たらしいよ。噂を聞いたお殿様が虎次郎と対局したんだけれど、秀策はまだ小さかったから、座布団を何枚も重ねてようやく碁盤が見えるようになった。それを聞いた地元の人たちは、『お殿様に対して座布団を重ねて座るのは、虎次郎だけだ(笑)』といって拍手喝采だったとか。」

薫ちゃん「やっぱり、才能のある人はこんな風に『神童』エピソードがあるんですね。」

石野先生「9歳の時に江戸の本因坊家に入門するんだけれど、その時の家元である本因坊丈和(ほんいんぼうじょうわ)は、『この子は、150年来の天才だ!これで本因坊家も安泰だわい。」といって喜んだらしいよ。」

薫ちゃん「150年って、微妙な数字ですね。」

石野先生「この時から約150年前は、今なお『碁聖』と称される本因坊道策(ほんいんぼうどうさく)が活躍していたころでね。丈和は、道策先生以来の天才だって言いたかったんだろうね。」

薫ちゃん「そんなにすぐに才能を見抜いちゃうなんて、丈和さんもすごいですよね。」

石野先生「もちろん!道策を『前聖』、丈和を『後聖』と呼ぶこともあるくらいでね。その迫力のある碁は、今でもファンが大勢いるよ。」

薫ちゃん「じゃあ、丈和さんには、ちょっと謙遜もあったかも(笑)」

石野先生「秀策に対する丈和の入れ込みようはすごくてね、自分の娘を嫁がせてもいるんだ。」

薫ちゃん「なんだか、政略結婚っぽい・・・」

石野先生「そうかもしれないけれど、秀策も、お嫁さんの花さんも、とてもいい人だったらしいから、幸せな結婚生活だったんじゃないかな。」

薫ちゃん「碁の天才にして、人格者・・・非の打ち所がないんですね。」

石野先生「さて、21歳になった秀策は、当時の公式戦ともいえる御城碁(おしろご)を打つことになる。そこからお城碁がなくなってしまうまでの13年間で、何と19連勝を達成してしまうんだ。」

薫ちゃん「19連勝!!!将棋の藤井聡太さんの、プロ入りからの29連勝もすごいですけど、13年かけての連勝もすごいですね。」

石野先生「当時はコミの制度がなかったから、特に先番で黒を持ったら鉄壁でね。お城碁の帰りに対局の結果を聞かれて、『先番でした』と答えたというのは有名なエピソードだよ。」

薫ちゃん「『先番=勝ち』ってことですか?すごい自信家だぁ。」

石野先生「まあ、このエピソードは眉唾物でね。秀策は控えめな人だったから、『あまり出来は良くなかったのですが、先番だったのでなんとか勝つことができました。』とか何とかいったのが、面白おかしく伝わったんじゃないかとも言われているんだけどね。」

薫ちゃん「意味が全然違うじゃないですか!怪しげなエピソードが勝手に広まってしまうのは、昔も今も同じですね。」

石野先生「そんな秀策なんだけれど、残念ながら34歳の若さで亡くなってしまうんだ。」

薫ちゃん「えっ!?いくら江戸時代といっても、若すぎませんか?」

石野先生「うん、当時江戸ではコレラが流行していてね、秀策はコレラにかかった仲間たちを看病するうちに、自分も同じ病気にかかってしまったらしいんだな。」

薫ちゃん「うわぁ、可哀そう・・・本因坊家の皆さん、ショックだっただろうなぁ。」

石野先生「奥さんの花さんが、秀策の両親に秀策の死去を伝えた手紙が残っているんだけれど、涙なくしては読めないよ。」

薫ちゃん「運命って、残酷だわ・・・」

石野先生「そんなこんなエピソードも、因島市が作った冊子には掲載されているんだろうね。」

薫ちゃん「私たちも、読んでみたいですね。」

石野先生「尾道市役所でもらえるらしいから、薫ちゃん、尾道まで取りに行ってきてよ。」

薫ちゃん「なんで私なんですかっ!先生が行ってきてくださいよ。」

石野先生「よしっ、自粛が解除されたら、2人で因島に行ってみようか?」

薫ちゃん「えっ!?2人で旅行・・・それって・・・」

石野先生「いやいやいや、秀策記念館に行くだけだから!日帰りだから!」

薫ちゃん「な~んだ、つまんないの(笑)」