薫ちゃんの徒然囲碁日記

囲碁に少しでも興味を持ってくれた方が、より囲碁を楽しめるような豆知識を紹介していきます。

第49話「棋士のあだ名って、面白いですね!」の巻

薫ちゃん「先生、先週開催されていた『平成生まれ世代別対抗戦』のYouTubeでの生中継は見ましたか?」

石野先生「星合先生が配信していたやつだよね。もちろん見ましたよ。星合先生の解説は面白かったし、大勢のゲストが電話出演してくれて色々な裏話も聞けたよね。ぜひ、大勢の人に見てもらって、囲碁の楽しさを感じてもらいたいなぁ。」

薫ちゃん「六浦雄太さんと謝依旻さんとの対局で、藤沢里菜さんがゲストで登場してましたよね。」

石野先生「お互い仲がいいみたいだから、話も盛り上がってたね。」

薫ちゃん「会話の中で星合さんが、『リーナゼロに聞いてみよう』って言ってましたけど、どういう意味なんでしょう?」

石野先生「あれは、大笑いしちゃったよ。まあ、薫ちゃんが分からないのも無理はないけれど・・・」

薫ちゃん「え~、そんなに面白いネタだったんですか。」

石野先生「薫ちゃん、囲碁AIの『LeelaZero(リーラゼロ)』って知ってるかい?」

薫ちゃん「はい、聞いたことありますけど・・・あっ、そういうこと!?」

石野先生「そう、藤沢里菜先生は、棋士仲間の中でも手が読めることで評判でね。『悪魔のように手が読める』と評されることもあるくらいなんだ。」

薫ちゃん「それを、囲碁AIになぞらえて・・・」

石野先生「薫ちゃん、カンがいいね。藤沢先生の深い読みをLeelaZeroの強さにかけて、『リーナゼロ』って呼んでるんだろうね。」

薫ちゃん「面白いニックネームですね。」

石野先生「棋士のニックネームにはその棋風や性格を表現したものが多いから、聞いているだけでも面白いよ。」

薫ちゃん「ほかにも、面白いニックネームがあれば教えてください。」

石野先生「そうだなぁ、じゃまずは『平成生まれ世代別対抗戦』に出場していた棋士から紹介してみようか。」

  謝依旻先生・・・・・「赤い惑星」
  一力遼先生・・・・・「先生」
  許家元先生・・・・・「許さん」「家元」
  藤沢里菜先生・・・・「リーナゼロ」
  上野愛咲美先生・・・「ハンマー」

薫ちゃん「井山裕太さんには、ニックネームがないんですね。」

石野先生「あまりにも強すぎるし、どんな碁でもこなしてアマチュアに理解できるような棋風がないから、ニックネームをつけ難いのかな。」

薫ちゃん「一力さんの『先生』って、まじめな雰囲気と早稲田大学卒業の学歴とで、ピッタリ!」

石野先生「そうだね。でも、最近新聞社に入社したから、今度は『記者さん』ってニックネームに変わるかもしれないよ(笑)」

薫ちゃん「許さんの『許さん』『家元』は、名前そのまんまじゃぁ・・・」

石野先生「これはそれぞれ、『ゆるさん』『いえもと』って読むんだよ。許先生の鋭く踏み込む棋風をよく表しているよね。」

薫ちゃん「上野さんの『ハンマー』って、女性につけるニックネームじゃないですよ。本人、嫌がってるんじゃないですか?」

石野先生「いやいや、上野先生の力強い棋風をよく表しているよ。実は、昭和の時代にも『ハンマー』とあだ名された人がいてね。上野さんは、2代目ハンマーってところかな。上野先生みたいに、力強い攻めの気風がニックネームになった棋士は多いんだ。」

  木谷実先生・・・・・「怪童丸」
  大平修三先生・・・・「ハンマー」
  宮下秀洋先生・・・・「猛牛」
  加藤正夫先生・・・・「殺し屋」
  淡路修三先生・・・・「ロッキー」
  山田規三生先生・・・「ブンブン丸
  金子真季先生・・・・「殺戮天使」

薫ちゃん「なんだか、物騒な言葉が並んでますね。」

石野先生「相手の石を殺して勝利するのは、ある意味で囲碁ファンの憧れだから、こんなニックネームがつけられるのは名誉なことだよね。他にも、棋風になぞらえてつけられたニックネームは、たくさんあるよ。」

  坂田栄男先生・・・・「カミソリ坂田」「シノギの坂田」
  藤沢秀行先生・・・・「異常感覚」
  大竹英雄先生・・・・「大竹美学」
  林海峰先生・・・・・「二枚腰」
  石田芳夫先生・・・・「コンピューター」
  武宮正樹先生・・・・「宇宙流」

 

石野先生「張栩先生・羽根先生・高尾先生・山下先生は、平成四天王と呼ばれるほど大活躍だったから、日本棋院がニックネームを公募したんだ。それで決まったのがこれなんだけれど、やっぱり自然発生したものじゃないからあんまり定着しなかったみたいだね。」

  張栩先生・・・・・・「韋駄天」
  羽根直樹先生・・・・「忍の貴公子」
  高尾紳路先生・・・・「重厚戦車」
  山下敬吾先生・・・・「フルスイング」

薫ちゃん「どれも、カッコいいニックネームですけどね。」

石野先生「カッコよすぎて遊び心がないから、逆に定着しないんだろうなぁ。」

薫ちゃん「一力先生の『先生』みたいなのは、他にないんですか。」

石野先生「もちろんあるよ。」

  橋本宇太郎先生・・・「火の玉」
  趙治勲先生・・・・・「七番勝負の鬼」
  依田紀基先生・・・・「ヨーダ
  河野臨先生・・・・・「部長」
  大橋拓文先生・・・・「宇宙人」「スペースマン」

薫ちゃん「こうしてみると、最近の若い棋士さんには、あまりニックネームがないんですね。」

石野先生「そうなんだよね。多分、AIの登場もあって序盤の打ち方が高度になってきたせいで、アマチュアが理解できるような『棋風』というものがあまり表に出なくなってきたんじゃないかな。でも、AIが登場してまだあまり時間がたっていないから、これから若手の棋士たちがAIを活用して新しい碁を生み出して、そこからまたニックネームが生まれてくることを期待したいね。」

薫ちゃん「いつか、棋士のニックネームがみんなに通じるようになるくらい、囲碁が普及するといいですね。」