薫ちゃんの徒然囲碁日記

囲碁に少しでも興味を持ってくれた方が、より囲碁を楽しめるような豆知識を紹介していきます。

第15話「『オレは、自惚れているのだろうか・・・』藤沢秀行先生のエピソード」の巻

薫ちゃん「今期の棋聖戦は、井山さんの防衛で終わっちゃいましたね。」

石野先生「そうだね。河野先生との碁はどれも熱戦だったけれど、井山先生のほうが一枚上手だった印象かな。」

薫ちゃん「今回が第44期ということは、44年間棋戦が続いているということですよね。すごい歴史ですね。」

石野先生「確かにそうだけれど、実は棋聖戦は、3大タイトルの中では一番歴史が浅いんだよ。」

薫ちゃん「えっ!?そうなんですか?一番格が上なのに、一番歴史が浅いんだ。」

石野先生「前にも言ったとおり、タイトルの格は、歴史ではなくて賞金額で決まるからね。」

薫ちゃん「44年前、初めて棋聖になったのは誰なんですか?」

石野先生「おっ、薫ちゃん、いい質問だね。第1期の棋聖位に就いたのは、以前にも紹介した藤沢秀行先生(故人)だ。秀行先生は、第1期から第5期まで棋聖位を5連覇して、名誉棋聖の称号を獲得したんだ。」

薫ちゃん「は~、育成だけじゃなくて、実績もすごい方だったんですね。」

石野先生「当時、秀行先生には多額の借金があってね。この棋聖5連覇で、その借金を返済したといわれている。」

薫ちゃん「やっぱり、破天荒な方だったんだ・・・」

石野先生「まあ、この手のエピソードはたくさんありそうだね。そうだ、秀行先生の名誉のために、先生の囲碁に対する真摯な姿勢がわかるエピソードを1つ紹介してあげるよ。」

薫ちゃん「どんなエピソードですか?」

石野先生「秀行先生は、将棋棋士芹沢博文先生(故人)ととても仲が良かったらしいんだ。で、2人でお酒を飲んでいた時に、『お互いにプロ棋士なのに、囲碁と将棋のことを全く分かっていないよな』って話になった。」

薫ちゃん「ふんふん。」

石野先生「で、神様を100とした場合に、自分たちが囲碁・将棋のことをどれくらい分かっていると思うのかを、それぞれが紙に書くことにしたんだ。」

薫ちゃん「ドキドキ・・・」

石野先生「せ~ので紙を見せあうと、秀行先生は『5』、芹沢先生は『3か4』と書いてあった。これを見て、秀行先生はつぶやいた。『オレは、自惚れているのだろうか・・・』」

薫ちゃん「きゃ~、カッコイイ~。」

石野先生「まあ、秀行先生らしいエピソードだよね。実話かどうかは知らないんだけれど。」

薫ちゃん「えっ!?作り話なんですか?」

石野先生「囲碁界には、こんな伝説がたくさんあるからね。でも、この秀行先生のエピソードは色々なところで紹介されているから、多分実話だと思うよ。」

薫ちゃん「やっぱり、プロになるような方は、皆さん謙虚なんですね。」

石野さん「もちろんそれもあるけれど、逆に囲碁がいかに奥深いものかを示すエピソードでもあるんじゃないかな。」

薫ちゃん「そっか、そうですよね。あ~あ、私も早くその奥深さが分かるようになりたいな~。」

石野先生「薫ちゃん、焦らなくても大丈夫だよ。僕も、まだ全然分かっていないんだから(笑)」